羽のない鳥/士狼(銀)
きな牙がぼくの喉笛を掻き切ると
そこからひゅーひゅーと頼りない音がして
ああ空気が漏れているのだろうと
重たい瞼を押し上げると
我先にと飛び出していたのは自由なことばたちだった
それはしばらくして沈黙し
ぼくはただただ空っぽの体で愕然とした
大きな牙はもう次の獲物を狙い定めていて
空っぽのぼくは発することばを失ったまま
ことばの世界で生きていたのに
理屈に絡まれたぼくはそれを認められなくなって
遂に愛想をつかしたことばたちは
この愚かな生き物から旅立っていったのだった
ぼくはいつだって
鳥になることができて
海を自在に飛んでいたのに
嗚呼。
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