ぼんくら/メチターチェリ
朝蝉が鳴いている
頭の中
五月蠅い五月蠅い五月蠅い
盆が暮れても暑さは衰えない
テレビを点ければABC放送が
全国高校野球選手権大会を中継している
画面の中
雲の欠けらただよう青空にサイレンが木霊する
涼しく気の利いた部屋の中のわたくしは
エアコンの運転音と蝉の声
デジタルハイビジョン放送が伝送する
現実よりワンテンポ・ツーテンポ遅い音響効果や
鮮やかな青 黄色い土煙 汗を吸ったユニフォーム
自身のくたびれた寝巻き姿をイメージしたのち
ふと 五年 十年 十五年と
まるで同じ情景を過ごしたように思う
一種のノスタルジーと改悛の念がわたくしの中に生きている
わたくしは冷蔵庫にある食材を漁り遅いめの朝食を作り始めた
茄子と挽き肉の味噌炒め
米を研いで飯を炊く
胡瓜は洗ってそのまま食べる
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