甘噛みのひと/恋月 ぴの
 

生を繋ごうとする本能の恐ろしさよ

抜いてはならぬとばかり、おとこの腰に絡めた己の執念深さ
それほどまでして産んだ我が子の行く末など

恐ろしくもあり
そして哀しくもあり




アキアカネの飛翔でも見かけられるなら
多少なりとも救われるものを

日差しの酷薄さは密やかな願いさえも無に帰してしまうようで

誰が打ち捨てたのか、ひしゃげた日傘は熱風に舞う




戻る   Point(25)