甘噛みのひと/恋月 ぴの
 
その橋の欄干から身を乗り出せば
清らかな流れの中ほどに石ころだらけの中洲

別段、川の流れに抗う姿勢をみせるでもなく
上流に夕立でもあればあっさりと荒くなった流れに呑まれ
ちょうど今ごろの季節なら週末ともなると
バーベキューの歓声が辺りを支配し

総ては川の流れが清めてくれるものと決め付けている




生きるとはなんだろう
あえてそんな問いに悩まずとも

ひとは生きる
生きてしまえるもの

川の流れをよく見やれば
ウミウの襲来などものともせずにひらを打つハヤの群れ

ひとかたまりと川面に揺れる




むやみやたらと子が欲しくなる


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