その方角に/千波 一也
草木のゆれる
その方角に
わたしはときを聴いている
これまでを悔い
これからを問い
わたしは巧みに
たじろいでいる
雲のちぎれる
その方角に
わたしはことばを呼んでいる
形になるのも
形にならぬも
すべて等しく
祝福したくて
、されたくて
潮騒のけむる
その方角に
わたしはひとを嗅いでいる
愛したことも
憎んだことも
ことばを離れ
波間に燃える
刹那のつみあがる
その方角に
わたしはわたしを生み落とす
救い、といえば
聞こえの良い
つくろい、
拾い、を
さまよいながら
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