罪人は夢を見る/五月(gogatu)
 
包まれて、いくら登ろうとも頂上にたどり着くことが出来ず
疲弊で足は震え、焦燥で唇は震え、呼吸は乱れて
身体を這い蹲るように前傾して、それでも登り続けて

元気ですか?
夜は霧に包まれて、いつしか風の音は甲高い女の叫び声に変わり
ただ眼球だけで女の姿を探しながら、もう一歩も動けなくなってしまって

お母さん
夜は霧に包まれて、何度も何度も行き来していたはずの階段なのに
突然、何かに突き動かされるように真っ逆さまに落ちてしまう気がして

僕は穢れてしまったから
こうして地獄へ落ちるのです
あなたはそれを見て悲しむでしょうか
いいえ、当たり前だと思うのでしょうね
けれど、
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