血を吐く真珠/はるな
 
貝殻が
閉じたあたりを
ゆびさして

ここが ずれ て、
いるから
もとの世界には
戻れないと

腕のほそい頃の
わたしが
言う


痛みは
嘆くもので
悲しみは
かなしむものだ

涙は
流すもので
拭う手を
望むな

あるいは
与えられるものに
うたがいを
持たず
伸ばした腕は
細くも正しく
憂いは
買うものではないと
知っていた
まだ胸のうすいわたし


それがどうして
こじ開けた指を
愛せるのか

わからず

ただ
ずれた外殻

そして

ながれこむ潮に
腐るまえに
細く
長く
血を吐く真珠



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