窓越しの嘘/千波 一也
青空から
おそわった言葉を
思い出せずにいる横顔を
やわらかく演じたら、
気まぐれな風たちの向こうに
緑はあふれて、
揺れている
たいようを
描きつづけることが
いつかの日々の念願でした
ふゆの
寡黙な花びらだけが
そんな欠片に
詳しいのです
かなしい種子は
髪の先まで植えられていて
季節をめぐるたび、
ゆたかに水辺が
広がっていく
そうして辞書は
無口になった
せせらぎみたいな
汽笛を聴いています、
今日も
かけがえのないすべてに
心が溺れてしまわぬように
待つ、ということを
試しています
今日も、
ひと通りのわがままは
日なたでぬくぬく育つから、
眠ってしまっても
大丈夫
素顔でいるなら、
大丈夫
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