物語/花キリン
 
     
古い絵本は古い本棚の奥にしまい込まれていた。埃を掃ってから古い時代の時間を巻き戻してみた。水が難しそうな顔をして、山奥からからこぼれ落ちてきた木の実と話をしている。木々が立ち姿を気にしながら、ページの端で何かを呟いている。風が悪戯して森のまわりを騒がせるから、深閑としたもの静かな出だしではなく、一ページ目には少し騒々しい風景が置かれている。続きは二ページ目に入るのだが、物語とはロマンだから、明るい絵の具で物語が森の隅々まで広げていく。白い鳩はどこからか飛んできて小枝の囁きを啄ばんでいる。それぞれの色が大人の静けさを保ちながら、物語は完成されていくのだろう。賑やかさを描いた後だから妙に
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