ひとつ いない手/木立 悟
 




緑は透り
透りは緑
雨の手のひら
うらがえす


斜めへ斜めへ息を吐く
斜めの先には水がある
見えない左
見えない弛緩


碧に翠に黄緑の羽
灰に白に水銀に
光をほどく
粒の柱に


かけらの子とひまわりの子が
すべてを見わたす場所で微笑み
ひとつひとつを指さしている
触れることなく触れることはなく


雨を追い
野はたなびく
水と 水以外のもの
蒼を運ぶ 蒼を運ぶ


天から地から
手のひらを貫く痛みが来て
すぐに消える
何ももたらすことのなかった手


手が手を透り
子のくちびるの前に着き
けしてとどかないかたちの
涙になる


何も得ずとも
言わずともいい
月と野原
呼んでいる子


帰り道も思い出も無い
次の宇宙がはじまるまで
ただ音だけを避けながら
羽と雨やどりはつづいてゆく
























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