漆黒/千波 一也
 


夜、は
首筋からこぼれ落ちて
かすかに甘い蜜のにおいを
隠している

命令に逆らいたい鳥たちが
もうじきそれに気づくだろう

囲いはすでに
万全なのだ



風がかくまう絨毯のうえで
猛毒は騒ぎもせずに
涙している

おのれの涙と
夜のしずくが
とけ合うように画策している



炎はその背に
氷の縁を負っている
ゆらゆら揺れて、
せめてもの
高熱で

飛び入りたがる者たちを
必死で睨みつけながら



夜、は
ちいさなものほど守れない

歯車が
明白であることだけが
やすらぎと信じて
巨大なものたちが
永遠じみて、
いく




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