板谷基雄の危篤/板谷みきょう
 
一昨日の夜更け
妹から電話が入る

21時に危篤状態になったよ

これからなら行けないよ

素っ気無く答えた

今日になって夕方に
車を飛ばした

ゼロゼロと絡まる痰い
酸素マスクを付けて
横になっている姿と

去年の12月に会った姿と
いつからか思い出せない位前の姿と
直線状に繋がることを
想起させないのは 何故か

家族が集まっている病室の
異様な光景が
虚ろな眼差しに
どう写っているのだろうか

かつて
高僧の今際の際には 弟子達がこぞって
今から死のうとしている状況下で
兎に角、何が見えるかを問うた

そんな逸話を思い出しながら
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