妻の寝顔 /服部 剛
 
夢の中に美人女優が現れたので 
ふら〜りと吸い寄せられていったら 
ぱっと姿が消えて、目が覚めた。  

隣には、妻が小さい鼾(いびき)をかいていた。 

起き上がって、ソファに腰を下ろすと 
机の上には  
先に寝てしまった後、深夜まで 
妻が打ってくれた僕の原稿が印刷されて 
そっとノートに、挟んであった 

原稿を手にした僕は 
無垢な姿で両手を胸にあてた 
世界にひとりの女(ひと)である 
妻の寝顔を、しみじみ眺めた 







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