きつね 二題/オイタル
い衆の酒宴で
昼から外で飲んでいた
若い衆のうちのひとりが
酔いに任せて、ずいぶんひどいいたずらを
仕掛けたことがあったそうです
山の方へ次第に濃く滲む夕暮れの闇へと
かわるがわる跳ねて逃げだす二匹の狐は
尻尾の白い影をしばらく残していましたが
ひと声高く鳴くとまもなく影も失せて
それ以来 もう二度と
戻ってくることはなかったといいます
やがて 夜の蒼い雲が
取り返しもつかないほど崩れ
遠くの村の狭い納屋の裏の暗がりで
わんわんの蝉をかじる
片目の白いきつねが一匹
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