履歴 ー野良猫3・5ー/……とある蛙
前の街で
俺は淫売宿のいかがわしい玄関口で
夕立に打たれて濡れながら歪んだ
恐ろしいほどの雷は
地上の何物かを鷲掴みにしようと
空から腕を突っ込むが
本当に一握りの無辜の生命を食い物にしただけで
暗くて分厚い雲の間を
後悔しながら唸っている
夕暮れの飛礫は
稲穂をすべての基準とする
この国のかつての住人には
有り難みのある贈与でしかない。
水はすべてを作り平らげる。
水は全てを恵み奪い去る。
俺は泣きながら、黄金の夢を見たが、
一向に夢を飲み干せずにいて
夏は朝四時から体中の汗で
もがきながら目覚め、
刺すような朝陽を窓から投げ入れる
夏の朝陽を呪い
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