蝉の泣く/相差 遠波
 
ペッシャンコの蝉が
歩道に転がっていた夏の朝
甘臭い生ゴミの袋の横に
カラリと乾いた屍一つ

カラッポの中身で七日間
うるさく喚いた命の遺したモノ
おい おまえそんな空しい姿になるため
七年間も土の中に居たのか

だけど嗚呼そうだ
人間の中身も所詮排泄物
そんな物が詰まっているよりか
カラッポになって七日間
うるさく喚ける命の方が上等かもな

声が出ない
訴える声が
そしてヤツラは
雑音としてしか
声無き声が聞こえない
三年に一回や
四年に一回だけ
自分らはここぞとうるさく喚くのに

たいそうなお題目をかかげた
薄っぺらな紙が入った
甘臭い生ゴミの袋の横に
カラリと乾いた

屍一つ
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