片遍路/アラガイs
 

‥ばかやろう‥ と言ったままの或る日
そのひとは入院して帰らぬヒトになってしまった 。
胸のなかに打ち込まれたまま
杭はいつまでも剥かれた棘のように
静脈を突き刺してくるその痛み 。
あの日、枝に突き刺した百舌鳥の餌は二十日過ぎて死んだ蝉
夏にはひとり砂浜の陰で
秋には風落ちる断崖の際に立ち
岬を振り返れば朦朧と月霞む帰り道を
昨日の朝靄だけを連れて歩いていた 。
何かに引きずられながら
側道を頼りにして歩いていた 。









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