月の山/蒲生万寿
れる
「この世は何処までも果てしなく、楽しく、愉快じゃねぇか」
理由を考えたり
必要とすることもない
岩の上を歩き
ひたすらに歩き
天辺へと向かうばかり
天辺に鎮まる社に深々と頭を垂れ
「元気です、達者です」
と神妙に告げ、礼を述べる
後は塵埃にまみれた自分の住む所へと下るばかり
私の記憶にはしっかりと
知るべきものと
感じるものが残っている
私の中に宿るものは
あらゆるものとつながり
小さなことも大きなことも
同等に並び
そこに居直る
そこにあるものが
一つ欠けても作れないと
一つの中にも全てが宿ると
知るものばかりを集め
掛け替えの無いものを形作る
今日も山の頂に風が吹く
私もその風に吹かれる
余りにも心地好い
その風に
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