すみれの花冠/
三原千尋
世界は圧倒的にただしくてうつくしくてわたしはただ
目の前のきみどりや水色や黄色や白を憎みながら
花かんむりもつなげられない無能な子としてそこにいるしかなかったのです
蝉の声がざんざか降ってくる
夏がいよいよ濃い色に熟れてゆく
私の知る夏はいつだって濡れていた
熱くても冷たくても同じことだった
骨ばってかわいてそれなりにおとこだった
ちぎれた花かんむりのはじっこをきみに託そうかどうか
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