すみれの花冠/三原千尋
 
すみれの花時計で十四時から二十三時までの十七分間を
世界で一番きれいだとうわごとくり返しながら
豚のように運ばれてゆく

荷馬車を降りれば
なまぬるく甘い夏に抱かれるのだ
息を詰まらせ汗ばんで
野卑な臭いを混ぜ合わせるのが好きだった

ぎとぎと粘っこい夏のほとりでは油の池が煮えている
蝉どもがじゅわじゅわと音立てて身を投げる
夏と心中するようにじゅわじゅわと身を投げる

四年前の五月のことでした
きみどりと水色のパステルカラーの河原で
どこにもいけずどこにも帰れず
泣きながらしろつめくさの花かんむりを編んでいました
ひとつ摘んでは将来を、ひとつ摘んでは世間体

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