そこには誰もいない/yo-yo
 
歌をあげているのだろう。
大阪の実家は、融通念仏宗。家をでた父の墓は、九州の山奥で法華宗。四国をでて九州で死んだ祖父は、真言宗から法華宗に。
お墓参りの念仏も、南無阿彌陀仏か南無妙法蓮華経かでややこしい。
念珠の形までうるさかった人たちも、いまはもう墓の中で眠っている。

おかげで、お盆は静かだったり、騒がしかったりする。
周りがだんだん静かになって、記憶の声だけが騒がしくなる。みんな、声が大きかったのだろう。
流浪する家系が流浪する。蝉時雨の道を歩いていて、ふと父の声に振りかえる。だが、そこには誰もいない。






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