そこには誰もいない/yo-yo
 
騒がしさの中に、静けさがある。見える声と、見えない声がまじる。
出かける人たちや帰ってくる人たち。生きてる人たちが遠くへ行き、死んだ人たちが遠くから帰ってくる。
生きてる人と死んだ人が、見えないどこかで交錯する。

行ったり来たりして、人生の半分を失ったみたいだ。
祖父も祖母もとっくに死んだ。叔父や叔母もほとんど居ない。若いいとこや親友までも、すでに幾人か逝ってしまう。
近しい人たちが、半分になった。

ごっちゃに集まるお盆の夜は、ご詠歌と鉦のひびき。父の声は祖父にそっくり、伯父の声は父にそっくりだった。
いまはもう、3人とも居ない。彼らに似た声の誰かが、また鉦をたたき、ご詠歌を
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