卑猥な月/天野茂典
 
しょになりたい 狼のように吠えたい
  精液が暴れる 女が濡れるシクラメンの香り
  街にはそうして精液の匂いがみちているのだ
  だから人は村から町へ町から街へ憧れを募らせるのだ
  海鳴りの音がしている 耳鳴りの音がしている
  ごうごうと男の下にも女の下にも地下水道が
  錆びたまま流れ 結びついているのだ
  男も女もおなじ水を飲んでいる
  性差があるのは生殖器官だけだ
  だからべっとり びしょびしょになれるのだ
  男も女も勃起するのだ 花が生殖器官であるように


  剃刀で切り裂いたような
  三日月が女子大校舎の上に出ていた

  美しく卑猥だった




                   2004・11・16

   


戻る   Point(3)