履歴書/佐々宝砂
男には三種類のタイプがあって
ひとりはイブに惚れる
もうひとりはマリアに惚れる
残るひとりはリリスに惚れる
というのを私は15歳のとき何かで読んだのだが
そのときすでにじゃあ私はダメだとあっさり結論づけた
不様に長い制服のスカートをばたばたさせ
自転車漕いで図書館に通いつめ
誰もいない天文部部室兼天文台でこっそり煙草を吸い
夜は夜で借りてきた美術書や詩集やマンガに見入る
そんな私がイブやマリアやリリスでありうるはずもなく
要するに私は私であり
特に不自由はしていなかった
しかし自分が何者であるかは見極めたくて
15歳は15歳なりに日記に書きとめた
女には三種類
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