周年/salco
終末を獲得した日
だがそれは、
ほんの小さな試作品に過ぎない
今日も晴れて暑い一日になりそうだ
空を横切る銀色の魚影は誰にも見えない
式典に集う生残者達は老いさらばえ
65年間流し続けた涙の預け場所も無いまま
明日から再た順に枯れ
名簿の柩に消え行くだけ
市長は今年も演壇で市民の無念を代弁してみせ
首相は空々しい、お定まりの台詞を並べてみせる
ニュースキャスターも神妙な面持ちで毎度の寸評
かくて核廃絶という、
短冊のお題目を並べながら
内心の無力感に打ちひしがれていないのは
今年も可愛い声を響かせる小学生の合唱団だけ
何故なら誰一人、未来の人間達に誓えは
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