待子さん/salco
そろそろ塾から帰る時間だ。
慌ててエプロンを外し、玄関を出る。外は真っ暗だ。ついこの間まで湯
の中を泳ぐような暑気に買物も億劫だったのに、もう星光のような風がそ
よめいている。
勤め人の帰路を真千子は遡上する。
今晩のメニューは大好物のハンバーグにスペインオムレツ、人参のグラ
ッセ、ブロッコリーとトマトのサラダ、オニオンスープ。
巨峰も冷やしてある。食器もセット済だ。何しろ純一は、あー腹減った
腹減ったと帰って来る。眠くなるんだから、我慢して先にお風呂入っちゃ
いなさい。
「ムリ! 頭使ったから先に食べないと、風呂で昏睡状態に陥るね」
五年生のくせに生意気な口をき
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