紙の夏/
たもつ
道に紙が落ちていた
人の名前が書いてあった
知らない名前だった
畳んでポケットにしまった
家に帰って紙を広げた
十分経っても知らない名前だった
ひどく蒸して
退屈な夏だった
死ぬ、という言葉が
お守りのように大切だった
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