おち葉の舟/yo-yo
 
日曜日の午後、黒井千次の短編小説を読む。短い小説は、小さな旅をしたみたいに、すこし疲れる。
朝の散歩で拾ってきたおち葉を、ページの間にはさみ、椅子にすわった姿勢で目をつむる。
眠るつもりはないが、眠ってしまうかもしれない。そんな曖昧な気分の海を漂うのが快い。

娘と、おち葉を拾って遊んでいる。
娘は小さなおち葉を、ぼくは大きめのおち葉を拾っている。親子がそれぞれに、自分の手に合ったおち葉を拾っている。
おち葉を拾おうとする右手に、なぜか力が入っている。
さらにその先へと、ぼくは必死で手を伸ばそうとしている。なかなか思うように、なにかに手が届かない。
気がつくと、ぼくの手の先に娘が立っている。娘はまだ幼くて、足元がふらついている。娘の足がだんだん、本の端の方へ向かっている。
ああ、落ちる、と叫んでさらに手を伸ばす。

がたんと音がして、体が浮き上がる感じがした。
床に本が落ちている。すこし離れたところに、栞にしたおち葉もころがっている。そのおち葉が、小さな舟にみえる。舟はまだ、夢の淵を漂っている。






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