スチール/黒川排除 (oldsoup)
 
いた場所を撫でてみるとまだ暖かかった。わたしはベンチの上で座ったまま身体を横たえ、その生温くなった箇所に頬を寄せた。目の前に道路が走っていた、縦になった道路には何も流れなかった、誰かの背骨だろうと思ったわたしはちょっと起き上がり、改めて自らが頬を寄せていた箇所を見つめて笑った。朝は近かった。やがて待ち人が来て、待ったろう、と言ったが、それほどと答えるにとどめた。そして何が起こっていたかをつぶさに報告した。待ち人は自販機の商品を物色しながら聞き流しているようだった。それから缶コーヒーを手にして戻ってきた。ベンチの上で未だうずくまるわたしの横に座ろうとして、待ち人は明らかに嫌悪感を示したように見えた、そして、ベンチが湿っていることを指摘した、ベンチの味自体は、とわたしは答えた、あまり良いものではなかったんだよと。
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