観覧車/長押 新
なる。
腫れた瞼を擦りながら一歩半、妹は疲れて果てている。無言のうちにまた一段と深く染まる観覧車と私達。妹の其れだけを確かめると、妹から目を離す。正面を向き直して顔を上げた。眩しい。観覧車にぶら下がる男が居る。ロープに首を入れて振り子の様にだらんと揺れている。オレンジ空に黒く浮かび上がり長過ぎたロープが風を受けて揺れている。頭を垂れた其れが、男だとすぐに判ったのはどういう事だろう。男が誰であるのかもすぐに判った。私は振り返り、だみた男の様な声で、見たのか?と尋ねた。男は回転していく。妹が急に他人に変わって仕舞った。まるで其れを見る為に顔を上げたみたいに、ああ、畜生目を反らさなければ私には人が死ぬ
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