観覧車/長押 新
観覧車が太陽と同じ様に空にへばり付いている。観覧車、観覧車の籠が、観覧車の車輪状の手足が、回転している。
辺りは太陽が燻っているかの様な厭な匂いがする。或はオレンジ空にありありと浮かぶ籠が燃えた後なのかしら。燃え滓、鉛を練り上げた様子の黒い観覧車と私達の歩いている一本の道の他何も動いていない。静寂。私の蹴り上げた砂利が沈黙した砂利にぶつかっては弾けていた。
私と妹は殆ど眠らずに故郷を探し歩いている。故郷が何処に行ったのかは見当も付かない。何も無い処を歩いて来たが、こんなに寂しい処は他になかった。私の故郷は夏だと言うのに此処は秋ではないか。全く可笑しな話だ。肌寒さから後ろを追いて来る妹が気になる
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