ピエロ・ing・ファンファーレ/茶殻
ことを思い出す
僕もそう思う と答えはしたけれど
どの春の話なのか僕にはわからなかった
どの春もそうなのかもしれなかった」
トランペットが不在の鼓笛隊には
ソプラノリコーダーを構えて並んでいる小学生の男の子
僕の小指が届かなかった場所には もう穴がない
やさしくなったのだ/黙っていても音は肩を組む/わをん
プリンを買ってきてくれないか との父からのメール
スーパーではすべての商品がプリンのふりをしていて
仕方がないから一番やわらかそうなものをレジに持っていく
追憶 メールの字は震えないからいいよな 父の笑い皺
今日は誰の葬儀だったか
粛々と式が進行していく間 僕は何かとんでもないことを想像し
とんでもない想像の結末に少しだけ泣いたんだ
遺影を焼き増ししてくれないか/写真も死体も焼くものに変わりないんだね
家に帰り着くと 先に帰宅していた母が
ハンバーガーを食べながら通販番組を見る 見ている
父は行進があったことも 僕が泣いたことも知らずに
天国の根っこで鈴のないタンバリンを叩く 叩いている だろう
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