放浪する水/yo-yo
 
放浪の俳人・種田山頭火の、
昭和8年(1933年)10月15日の日記。
私は酒が好きであり水もまた好きである。昨日までは酒が水よりも好きであった。今日は酒が好きな程度に於て水も好きである。明日は水が酒よりも好きになるかも知れない。

この夏は私も、もっぱら水ばかり飲んでいる。
へうへうとして水を味ふ、のは山頭火。冷蔵庫で冷した水を、ごくごくと飲むのは私。
体にたまった水は、やがて頭のてっぺんから足の指先まで、汗になって噴き出す。水という形のないものが、形のないままに、体の中を素通りして流れだす。
行雲流水、雲はゆき水はながれる。私の体も雲の管になって、ただ水を流す。早朝の公園を歩く、
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