蟷螂の理/只野亜峰
 
蟷螂は交尾を終えると雌が雄を食べてしまうという
そんな恐ろしい話を聞いたので調べてみたのだが
厳密に言うと交尾の有無とは関係無く
雌には雄が餌にしか見えないらしい

自然界で捕食される事は滅多に無いらしいが
それも単純に雄が雌の歯牙から逃れる術を知っているからというだけの話で
雄から見れば子孫繁栄のためのパートナーであっても
雌にとっては手頃なファーストフードなわけであるから寂しいものだ

もっとも飼育ケースの中と違って自然界で捕食される雄というのは
たいていが多くの雌と交尾したために精力を使い果たし逃げ切れなかった者らしいから
男子の本懐を遂げた末の姿であると言えばそうであるのかもしれない

人間の雄だって所詮は雌の生餌にしか過ぎないわけで
それが金銭という餌であるか肉体という餌であるか
社会的地位や精神的安定という餌であるかという違いはあるが
結局のところ雄が雌の餌であるという事実には変わりない
突き詰めるなら子孫を育む事も雌に捕食される事も等しく雄の役割であると言える
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