水面下での戦い/三条麗菜
射し込んだ太陽の光で
その鱗が一枚一枚
青緑の金属のように光ります
その美しさは息を飲むほどで
もし水面から上がり
直接太陽の光を浴びたなら
もう誰一人目をそらすことは
できないでしょう
無数の光を抱く
女神のようになるのです
私が……
ああこの私が……
でも竜は決して
水面に上がっては
いけないのです
決して……
決して……
人が死ぬからではなく
私が人間でなくなるから
あなたに笑顔を与えた日
帰りに独りで寄った
ドラッグストアで
一本百円の
液体クレンザーを買って
これからキッチンの
シンクを磨きます
思い切り磨きます
美しいという言葉が
思わず出るほど
戻る 編 削 Point(3)