リア充のひと/恋月 ぴの
 


挨拶だけは上手になったけど




わたしの帰りを女の子が待っている

新しくはないけど洗いたてな木綿のドレス
髪の毛はさらさらで

開け放した窓からの風に輝いて

お母さん、おかえりなさい

駆け寄る笑顔がわたしを待っている




いつかはきっと気付く

わたしとは
性格も顔立ちも異なる赤の他人がわたしの部屋にいて

当たり前のように
わたしのファンデーションを使っている

そんなもんだと思う

それでもわたしは欲しているらしい




野良のために買い込んだキャットフード
わたしでも食べられないかと缶詰のラベルに見入る




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