リア充のひと/恋月 ぴの
挨拶だけは上手になったけど
※
わたしの帰りを女の子が待っている
新しくはないけど洗いたてな木綿のドレス
髪の毛はさらさらで
開け放した窓からの風に輝いて
お母さん、おかえりなさい
駆け寄る笑顔がわたしを待っている
※
いつかはきっと気付く
わたしとは
性格も顔立ちも異なる赤の他人がわたしの部屋にいて
当たり前のように
わたしのファンデーションを使っている
そんなもんだと思う
それでもわたしは欲しているらしい
※
野良のために買い込んだキャットフード
わたしでも食べられないかと缶詰のラベルに見入る
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