虹/yumekyo
 
のまま光の雫に変身して
雨水の良く馴染んだ黒土の上に次々と跳ねました
それは軽やかなリズムで
それは充実感に満ち満ちていて

向日葵畑の向こうに細い道が続いていました
水溜りが薄紅色の空を映していました
入江の傍に 黒瓦の堂々とした家並みが数十軒連なる
半農半漁の集落のようでした
家並みから炊煙が立ち上り始める頃
集落の中心に一台のバスが止まり
街で勤めを終えた男たちが次々と降りてきました
真白のシャツに麦藁帽子の影が落ちる男たちは
それぞれが立派な父親でもありました
バス停まで迎えに来ていた子供たちが父親からかばんを受け取り
やがて皆々 細路地に散っていきました

あるいは少年が見た風景は
永遠の安堵を夢見た大人たちが
雨上がりに築いた塑像だったのかもしれません
駆け出したのは 衝動だったでしょう
しかし今少年の足取りは格段にしっかりしております
少年の心には勇気が宿りました
それは 確かな希望がもたらしたものです

少年の疲れは一気に吹き飛び
もと来た道を帰って行きました

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