蜻蛉の空/yo-yo
 


とつじょ空をひき寄せて、矢のようにトンボが飛来する。(黒と黄のしましま模様の、それはたぶんオニヤンマ)。
ぼくの頭上をかすめて、往ったり還ったりする。少年が不在の夏を、おまえはテリトリーにしていたのか。
ぼくは記憶の鞭を、かれの行く手に振りおろした。
手応えはあった。しかしそれは、きらきら光る風の記憶だったかもしれない。

トンボは消えた。
空にぽっかりと穴があいて、そこだけ、夏の空が失われている。
そこにあったのは、トンボの空だった。






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