虐殺風化/はらだよしひろ
 
寂しく渡った海
風が撫でている

1948年に何があったかと聞かれて
君は歴史上の出来事を懸命に思い浮かべようとするだろう

僕にとって
1948年は
海と
月と
波に浮かぶ火山島と
風と
石と
女と

屍と
生きるものの沈黙と
誰々が殺されたという風聞と

記憶にない記憶

何度も聞いた
大叔父が二人も殺された


18歳から40歳の男は皆殺しだ

「月を見よ」
月光に美しく映える女性も皆
殺された

肌からもれた光は血を照らした



陰りゆくものを
あなたは笑うだろう
僕に流れている時空も
もう薄いから

何が
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(0)