夜に/草野春心
君は机に向かう
ボールペンを握る
罫線の上に
言葉を置いてゆく
それは君の決めた枠
君の胸の奥で
何か切実なものが発熱している
窓の外で一日の最後の光が消える
夜がくる
君が書かないこと
闇のなかを流れる川のこと
柳の木の下の
うらぶれたベンチのこと
一人の男が君の手を握る
君の唇にざらついた舌を差し込む
ヴァギナに指をいれる
君が
けして書くことのできないこと
それは君の決めた枠
夜がくる
どこか別の場所で
違った君が
違った机に向かい
違ったボールペンで
違った罫線の上に
違った言葉を置いてゆく
違った僕が
違った君を
きつく抱きしめる
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