分別劇/佐々木妖精
男は声も殺さず泣きじゃくり
スワンで津波を煽動し岸へ乗り上げ亀を逆にした
再度、凶器と化した車で特攻をしかけ
そこら中の地面という地面を陥没させ、木という木を粉砕して
これから足繁く通い詰めることになるであろう牛丼屋で特盛りを頼み、屍肉を喰らう
一度は愛した女へ 別れを告げる鬼となるために
悲愴を奏でる夫とは対照的に
インターフォンを覗く妻は玄関まで出迎え 命の始まりを告げる
「ほんとに俺の子か?地球の子じゃないのか」
「私たちも地球の子なんだから、この子もきっとそうよ」
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