研ぐ男/草野春心
 


  真昼
  一人の男がテトラポットに座り
  何か岩石のような物を
  サンドペーパーでごしごし研いでいた



  これは私のポエジーです
  問いもしないのに男は言う
  混信したラジオのような声を
  四方八方に拡散させて



  幾つかの扉が砂の上に開く
  太陽と海とを囲む額縁となる
  何一つ顧みない男
  やがて潮風に呑まれ息絶えた



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