括った髪の分だけ、返して掌/渡邉建志
僕は僕に必要なものを探して夜の帳の向こうへ旅立ったのだ。
冬山の上の祠にしゃがんでいると、尻の底から冷えてしまったが、
震えているのは僕だけではない、町にちりばめられたフォトンたちもだった。
神さまは山から町を見守っているが、僕は町を見下ろしているのだと思った。
僕は今日この町のすべての残り香を赤いマフラーで盗むのだ。
あなたの愛犬はまだ私の匂いを覚えているかしら。
夕暮れる空を見るとあなたのポニーテールが霞んで見えることがあります。
幸せなほほに浮かぶえくぼが。
あなたのすらりとした足、
あなたのまっすぐに伸びたせなか、
あなたのやわらかい胸、
あなたのやわらかい声、
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