生ハム/只野亜峰
 
生ハム一枚掴んで食べる
ブラックニッカで喉を潤す
聞きなれない英語の歌を子守唄代わりにして
眠れぬ夜の暇潰し

昨日は可笑しな夢を見た
俺は目撃者で彼女は人殺しだった
彼女は黒服と一緒に俺を追いかけるのに夢中で
俺は町中を逃げ回るのに必死だった

今夜もあの夢の続きを見るのだろうか
あの華奢な体に追われるのだろうか
あの細い指先で喉を締め付けられて
あの凛とした眼差しに見つめられて
綺麗な造形のような輪郭を眺めながら
死んでいくのなら悪くない

そして朝になったらいつものように
あの娘の声で目が覚めるんだ
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