なにとなににさよならを告げればいい/ホロウ・シカエルボク
 
んとなく判った
ハンバーガー屋の勝手口からコンビニエンス・ストアまで
硬球みたいなネズミが猛烈なスプリント
生きることが命題なら
たいてい優雅には見えないものだ
シグナルが点滅に変わる
街はひそかに死んでいった
誰かの逸話を話してるみたいになった
ずっと忘れていた音楽が頭の中で鳴り続けている
チープな靴底が
いつでもお役御免の機会をうかがっている
一台のバスが通り過ぎる
客席には誰も乗っていない
そんな時間に
客を乗せるバスが走るわけがない
小さくなってゆくがらんどうの客席
小さくなってゆくがらんどうの…
明かりの届かないところまでそいつが走ってゆくのを
見送ることはなんとなく止めにした
ただ行き過ぎてしまうものたちは
編集で切り落とされた
映画の素材みたいに冗長だ
ふと、気づくと
壊れた街灯の下で
記憶の中の明かりを頼りに歩こうとしていた
夜明けにはまだ遠く
そして
眠りは半ば諦めてしまっていた








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