追憶の唄/洞野いちる
箪笥の整理をしていて見つけたTシャツ
ぎゅっと胸に抱くと
懐かしいあなたの香りがしました
それはずっと昔、あなたからもらったもの
少し色褪せた白い布地に大きく描かれたオレンジの花
「この絵はね、染めて描かれたのよ」
元気だったころのあなたはそう言っていましたね
大切に 大切に あなたはこのTシャツを着ていました
わたしがもらったときも、染み、ほつれひとつなく、新品同様でした
大きく深呼吸すれば
わたしの肺腑はあなたの香りで満たされてゆく
よしよしと撫でてくれた炊事で荒れた手、いつでもわたしの味方だったあなたの抱っこ
辛すぎたカレーライスも、叩かれて手のひらの痕が真っ
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