十九歳の夏/長押 新
 
ゆれうごいては
もがいていた死人が
たしかにわたしだった
となりでふるえているだれかが
だれなのかさえしれない
くるしい、
くるしいとうなだれて
はげしくおうとした
なつのあつさがじりじりと
かすかにひふをやいて
すぐ
すぐ
すぐすぐ、
すぐ
すぐ
すぐすぐ、
大人になれと
せみまでないている
よいすぎてはんきょうする
そのころにはすっかり
さけではいをみたし
いにはいったかなしい、
かなしいが、
それだけはきだせずに
ひっかかるようにのどをおして
すじのようにさけて
ほんとうにさけちまって
死体のせなかから
わたしがうまれ
せみのように
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