No.613 遺書/邦秋
 
「なぜ僕は生きている」?

体調と呼んだら固体過ぎる
何処かの風邪を抱えて

時には力すら弾きながらも
苦痛の朝を越えた
意識的な口角を上げて
苦痛の昼を越えた
時に流された者を見送って
苦痛の夜を越えた

人格と現状に正直に
特別な日を大切にできないことを伝えた
閉ざされる時間を迎えて
特別な日を大切にできない自分を憎んだ

何故か突然、笑えなかった自分に少しだけ笑えて
氷の表面に現れた水滴を感じた
冷蔵庫に入っていたケーキから
温かみを取り戻し始めた


此処に生み出したのは蝋燭の火と心限りの歌だけで
客観的には世界で一番感動のない祝いを終えて
此れから総ての融解を行える可能性を見出した矢先
放たれたのは、此の朝の越え方の[否定]



何故無理をして13時間半を越えた?
何故自分を憎んで融解を行えた?

総てが無だとわかったとき、
総てが無意味だとわかったとき、

「なぜ僕は生きている」?

その答えを一気に失った
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