九橋街道六時半/竜門勇気
 

九橋街道六時半
本当のぼくを探して歩いた
自分探し六時半
ぼくは空っぽだっただったのだけれど
なんの問題もなく生きていた

九橋街道六時半前
空っぽを支えて限界がきた
自分探し前夜
ぼくの空っぽの容器はついに砕けた
空っぽの一人歩きが始まった

友達に電話をかけたら
笑い声が帰ってくる
笑い声は今までは空洞の中でこだまして
ぼくはぼくらしく振る舞えたのだけれど
笑い声は聞こえた瞬間に何度か辺りに反射して消えてしまった
ぼくは笑い声に興味をなくす

実家を訪ねて
これこれこうだと話したら
それでも家族だと泣かれた
鳴き声はぼくの肘のあたりを掠って

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