水を飲む/yo-yo
、ひとも魚も変わらない。
琵琶湖に棲む百種もの魚や貝と、ぼくは水を分け合っている。魚たちが口に含み、吐き出した水を飲んでいる。水を飲むとき、水が体の中をくぐり、体が水の中をくぐって、ぼくも魚になる。
琵琶湖には、そこにしか居ない魚がいる。
3年ほど前、数千匹のイサザという魚が、死んで湖底に沈んでいた。死因は酸欠だった。
琵琶湖も、深呼吸をするという。
冬場の寒さで湖水が冷やされ、比重を増した水が湖底に向かって下降する。反対に深層部の水が上昇する。この循環が、湖水に酸素をゆきわたらせる。
湖も生きている、魚も生きている。湖がうまく呼吸できないと、魚も窒息してしまう。
ときには湖が、魚たちの涙のうみになる。そんな日の水は、まずい。
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